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休職中の一人事務に「これだけ教えて」。小さな会社の連絡と仕事の整理

メンタル不調で休職した一人事務の担当者に、請求書や取引先の確認をしてよいのか。10人の設備工事会社の架空事例から、療養中の連絡方法、引継ぎができない仕事の整理、産業医への相談を解説します。

執筆: 佐賀・筑後産業保健事務所公開日:

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「ゆっくり休んでください。ところで、先月の請求書はどこにありますか」

メンタル不調で休職した従業員へ、こんな連絡をしていないでしょうか。一つずつは短い質問でも、毎日のように届けば、本人が仕事から離れにくくなることがあります。

人手の少ない会社では、「本人しか分からない」が現実の問題になります。療養を守るには、連絡の回数だけでなく、本人の返事がないと進まない仕事を会社側でどう扱うかまで決めることが大切です。

以下の事例・会話・対応例はすべて架空で、当事務所の実績や実在の相談例ではありません。業務の整理方法や文面は、現場で検討するための独自の提案です。

10人の設備工事会社。休職しても、毎日どこかから質問が届く

社長を除く従業員10人の設備工事会社を想定します。社長も現場に出ており、Aさん一人が請求書の作成、入金確認、給与計算に必要な資料の取りまとめを担当しています。

Aさんはメンタル不調で受診し、主治医から休養が必要と判断されました。会社は休職の手続きを進めましたが、十分な引継ぎができる状態ではありませんでした。

翌日、社長が「請求書の保存先だけ教えて」と連絡します。その次の日には現場責任者が取引先の連絡先を尋ね、週末には同僚から「この金額で合っていますか」と画像が届きました。

Aさんは申し訳なさから返信し、確認のために自宅で会社のパソコンを開くようになりました。会社側は「本人が答えてくれるので、負担は小さい」と考えていました。

ここで見直したいのは、誰か一人が送った回数ではなく、会社全体から届く連絡と、それに答えるために必要な作業です。

休職中にも必要な連絡はある。仕事の質問は混ぜない

厚生労働省の「こころの耳」は、体調によって引継ぎができない場合もあることを示し、可能な場合も最小限にとどめ、その後の業務連絡を控えるよう勧めています。引継ぎが終わるまで必要な休養を待たせる対応は避けます。こころの耳・休業前から休業中の支援

一方、休職の手続きや利用できる制度の案内、本人からの相談に応じる連絡先は必要です。両立支援指針でも、あらかじめ連絡方法を定め、療養中の相談や情報提供を行うことが示されています。厚生労働省・休業期間中のフォローアップ

この会社なら、連絡の内容を次のように整理できます。

表は横にスクロールできます。

連絡の内容 会社側での扱い方の例
休職手続き、給与・社会保険に関する案内 窓口から、必要な事項と期限を分かりやすくまとめる。対応が難しい場合の相談先も伝える。
体調や今後の手続きの確認 本人の状態と医師の意見を踏まえ、方法と時期を相談する。毎日の詳しい症状報告を一律に求めない。
請求額、資料の保存先、顧客への返答の確認 まず社内資料や取引先への照会で確認する。本人への質問を業務手順に組み込まない。

「体調はいかがですか」という連絡の末尾に仕事の質問を添えると、療養のための連絡が、作業依頼の入口になってしまいます。

窓口と、連絡する内容・方法・次の時期を決める

専任人事がいない場合でも、会社からの連絡窓口を決めることはできます。この事例では社長を窓口とし、同僚からの業務上の疑問はいったん社長へ集めます。

本人とは、電話・メール・郵送などの受け取りやすい方法、必要な連絡事項、次に確認する時期を相談します。「毎週電話する」「一か月は一切連絡しない」と回数だけで決めず、体調、医師の意見、手続きの期限に合わせます。

例えば、本人と方法を確認した後、次のような案内を送れます。

会社からの連絡は私にまとめます。請求書や取引先への対応は会社で整理するので、仕事の質問に返信したり、パソコンで作業したりする必要はありません。休職に必要な書類と期限は、別途まとめてお知らせします。次の確認は○月○日に、相談した方法で行います。連絡を受けることが負担な場合や、手続きで困ったことがある場合は、この窓口へお知らせください。

この文面を送る前に、社内にも同じ方針を伝えます。社長だけが控えても、同僚が個別に仕事を頼めば、本人の負担は残ります。業務用グループの通知をどう扱うかも本人と確認し、必要な手続きの連絡が届く経路は確保します。

社長とのやり取り自体が本人の負担になっている場合は、別の担当者や、契約した外部相談先を窓口にできるか検討します。社労士等へ依頼する場合は、本人への説明、対応範囲、費用を確認します。

返事が遅いときも、すぐ「協力する気がない」と評価したり、複数人で電話を重ねたりせず、決めた連絡方法と本人の状態を確認します。安否に具体的な懸念がある場合は通常の事務連絡と分け、責任者が緊急連絡先等を用いた安全確認を検討します。

本人しか分からない仕事は、期限と代替手段から整理する

社長は現場責任者と短く打ち合わせ、まず「期限がある仕事」「手元で確認できる資料」「確認先」を一覧にします。本人に引継ぎ書を作ってもらうことを、その出発点にしません。

この会社では、例えば次のように進めます。

  • 給与に必要な資料:現場の出勤記録や勤怠データを会社側で集め、社長が不足を確認する。委託先があれば契約範囲を確認し、なければ期限と費用を伝えて社労士等へ相談する。
  • 請求書の金額や締切:見積書、注文書、作業完了の記録から確認する。不明点は社長が取引先に照会し、請求日などの変更が必要なら協議する。
  • 社内向けの集計や資料作り:すぐに必要でないものは止める、頻度を減らす。従来と同じ資料を作ることより、期限のある処理を優先する。

給与の支払いや法定の手続き、安全に関わる対応は、社内資料と同じ感覚で後回しにできません。担当者と期限を確認し、間に合わないおそれがある時点で専門家や関係先へ相談します。

整理する時間は、例えば初回30分を業務時間内に確保します。これは着手の目安で、30分あれば全業務を引き継げるという意味ではありません。その時間を作るため、社長が新規の現地調査や見積りの予定を減らすことも検討します。

外注には費用と準備が必要で、すぐに引き受けてもらえるとは限りません。確保できなければ、受注量や会社側で行う仕事をさらに絞ります。残った従業員や社長が、毎晩埋め合わせる方法を前提にしないことが必要です。

産業医には「電話してよいか」より、連絡の中身を伝える

産業医等には、例えば次のように相談します。

「一人で事務を担当していた従業員が休職しています。請求書の確認で連絡が続き、自宅で作業もしていたようです。仕事の質問は会社側で止めますが、休職手続きの連絡をどう進めれば負担を減らせるか、相談したいです」

伝えたいのは、連絡した人・回数・内容、返答に必要だった作業、本人から聞いている負担、会社が変えられることです。

産業医等は健康状態と仕事の状況から必要な配慮を助言し、会社は窓口や仕事の分担を決めて実施します。 健康相談や作業管理、健康障害の再発防止は産業医の役割に含まれます。厚生労働省・産業医の職務

産業医がいない場合も、外部の産業保健に詳しい医師へ相談する方法があります。主治医に直接照会するときは、目的と確認内容を本人に説明し、同意を得て進めます。詳しい診療内容を集めることが目的ではありません。個人情報保護委員会・職場での健康情報の取扱い

「メールに返事ができた」「一度パソコンを開けた」ことだけで、通常勤務に戻れるとは判断しません。復職は、医師の意見、本人の意向、実際の仕事内容などを踏まえて検討します。厚生労働省・職場復帰の判断

すでに自宅で作業していた場合は、依頼内容と作業時間を確認します。「休職中だから無給で手伝ってもらった」で済ませず、医学的な配慮と併せて、就業・賃金の扱いを社労士等へ相談します。本人が「少しならできます」と言っても、それだけで業務を再開させないようにします。

見直すのは、本人の返信だけでなく会社側の動き

連絡窓口を決めたら、会社側では次の3点を確認します。

  1. 同僚や取引先から、本人へ仕事の質問が直接届いていないか。
  2. 社内で止めると決めた資料作りが、結局誰かの残業になっていないか。
  3. 給与や請求など、必要な処理の担当者と期限が決まっているか。

本人の詳しい体調や診断書は、こうした業務の一覧と分けて管理します。同僚へ伝えるのは、当面の担当、確認先、止める仕事など、業務に必要な範囲を基本とします。個人情報保護委員会・健康情報の取扱い

落ち着いてから、請求の締切、資料の保存先、問い合わせ先などを、会社として使える簡単な手順に残します。休職した本人に、療養中のマニュアル作りを任せる運用にはしません。

佐賀・筑後産業保健事務所では、50人未満の事業場向けの相談・面談を受け付けています。経営者・総務担当者への個別の医学的助言や従業員面談は有料で、対応範囲と料金を確認してからご依頼いただけます。

お問い合わせでは、「事務担当が一人」「休職中の連絡方法に迷っている」など、職場の状況をお知らせください。初回の連絡に、従業員の実名や詳しい診断内容を記載する必要はありません。

※資料確認日:2026年10月12日。一般的な情報と架空の対応例をまとめた記事です。個別の療養・就業上の判断や労務の取扱いは、医師・社労士・弁護士等にご相談ください。

参考資料

コラムは産業保健の一般的な考え方を整理したものです。公開時点の情報に基づきますが、法令の解釈や運用は一次資料と専門家の確認が必要です。個別事案の判断には使えません。

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