佐賀・筑後産業保健事務所の本文へスキップ
佐賀・筑後産業保健事務所企業のための産業医サービス

糖尿病の治療中なのに、昼食が遅れる。人手の少ない会社の仕事調整

糖尿病の治療中の従業員から、忙しくて昼食が遅れると相談されたら。9人の建材卸会社の架空事例をもとに、産業医に伝える勤務情報、代替要員がいない場合の受付・受注の調整、低血糖への備え、健康情報の共有範囲を解説します。

執筆: 佐賀・筑後産業保健事務所公開日:

この記事は約9分で読めます(目安)。

「薬を使っているので食事の時間に気をつけたいのですが、昼になると来客が続いて、食べるのが後回しになります」

こう相談されたとき、「空いた時間に食べて」「誰かに代わってもらって」だけでは、仕事の状況が変わらないことがあります。

産業医に相談できるのは、本人の治療と仕事の内容を照らし合わせ、必要な配慮を具体的にすることです。 食事の時間、作業の負担、体調が変わったときの対応まで整理します。糖尿病情報センター・働く世代と糖尿病

以下の事例・会話・対応例はすべて架空で、当事務所の実績や実在の相談例ではありません。受付時間などの調整案は、現場で検討するための実務上の提案です。

9人の会社。窓口担当が一人で、昼になると抜けられない

従業員9人の建材卸会社を想定します。社長は営業を兼務し、専任の人事担当者はいません。Aさんは一人で窓口と発注を担当しています。

昼前から、現場帰りの顧客が材料を取りに来ます。倉庫には2人いますが、積込みを担当しており、個別の見積りや品番の相談までは代われません。

Aさんの昼休みは予定上12時からですが、実際には14時近くまで食べられない日があります。食べ始めても電話が鳴れば対応します。

Aさんは糖尿病の治療中で、主治医から食事の時間について注意を受けています。社長には「仕事は続けたい。ただ、忙しい日の食事をどうすればよいか困っている」と相談しました。

この会社で確認したいのは、昼休みの予定があるかに加え、その時間に窓口を離れられる仕組みがあるかです。

医師には「事務職です」だけでなく、食事が遅れる場面を伝える

糖尿病の治療を受けている人が、全員同じ配慮を必要とするわけではありません。薬の種類によって低血糖の起こりやすさは異なり、薬を使ったあとの食事の遅れや、食事量の不足などが影響する場合があります。糖尿病情報センター・低血糖

社長とAさんが最初に整理するのは、例えば次の4点です。

  • 食べ始められた時刻と、途中で呼び戻される場面。
  • 窓口以外に行う荷運び、運転、高所作業などの有無。
  • 一人になる時間帯と、具合が悪くなったときに連絡できる相手。
  • 本人が主治医から受けている、仕事中の食事や体調変化に関する指示。

「事務職」とだけ伝えると、昼の来客対応や倉庫の手伝いは医師に伝わりません。まず、普段の一日の流れを紙一枚にまとめます。

主治医は治療上の注意点を示し、産業医等は実際の業務に照らして、食事の確保や作業上の配慮を助言します。会社は医師の意見と本人の希望を踏まえ、具体的な対応を決めて実施します。 主治医へ直接照会する場合は、目的と内容を説明して本人の同意を得ます。厚生労働省・両立支援の進め方

薬の種類や量、使用時刻を、会社の都合で変更させることはしません。食事が遅れる日の対処は、本人から主治医・薬剤師に確認してもらいます。

代わりがいなければ、昼休み中の受付と受注を変える

必要な食事の時間帯を確認したら、その時間を確保できる仕事の進め方を考えます。「全員が12時に食べるべき」という一律の決め方ではありません。

この会社なら、次のような案を検討できます。

表は横にスクロールできます。

困っている場面 社長が決め、職場で実施する調整例
昼休みに見積りや品番の相談が入る 相談窓口の休止時間と再開時刻を案内する。即答を約束せず、再開後の受付・回答に変更する。
材料の引取りが昼に集中する 予約時に引取り時間を調整する。既存の納品条件は顧客と確認し、変更が必要な案件は社長が交渉する。
電話が鳴るたびに食事が止まる 休憩中は留守番電話などで再開時刻を知らせる。運転中や危険な作業中の人へ転送して済ませない。
午前の処理が昼まで終わらない 当日対応の受付締切や受注量を見直す。休憩を削って処理する前提をやめ、後日に回す仕事を決める。

最初の打合せは、例えば社長とAさんが業務時間内に20分程度を取り、まず一つの変更を決めるところから始められます。これは打合せの目安であり、必要な休憩や医師への相談時間を示すものではありません。

案内の掲示や既存の電話機能で対応できれば、新たな採用なしで始められます。ただし、機能追加の費用、顧客との調整、売上や納期への影響は確認が必要です。契約上の対応義務や安全に関わる連絡を、確認せず止めることはできません。

どうしても止められない対応には、担当者と対応範囲を決めます。その人にも休憩と安全な作業時間を確保できなければ、受注範囲や提供するサービス自体の見直しが必要です。社長や同僚が毎日休憩を返上する方法では続きません。

なお、電話や来客への対応を求められている時間は、休憩として扱えません。法定の休憩は、労働時間が6時間を超える場合に45分以上、8時間を超える場合に1時間以上を勤務の途中に確保します。病気への個別の配慮と、すべての従業員に必要な休憩の確保は、両方進めます。厚生労働省・休憩のルール

低血糖への備えは、本人だけに任せない

低血糖への対応が必要な人では、あらかじめ主治医の指示を確認し、職場でどう対応するかを決めておきます。仕事への配慮は個別に判断するもので、糖尿病という病名だけで運転や単独作業を一律に禁止するものではありません。厚生労働省・糖尿病に関する留意事項

例えば、本人が用意するブドウ糖などの置き場所、作業を中断するときの連絡先、本人が自分で対応できないときに誰が救急要請するかを確認します。棚の奥や施錠された部屋など、必要なときに取り出せない場所を避けます。

意識がはっきりしない、けいれんがあるなどの場合は、産業医の訪問日を待たず119番に連絡します。飲み込めない人の口に、飲み物や食べ物を無理に入れないでください。 低血糖では自覚症状が乏しい場合もあり、本人が「平気」と言うことだけで安全を判断できません。糖尿病情報センター・低血糖時の対応

冷や汗、手の震え、ぼんやりするといった異変があるときは、安全を確保して作業を中断し、主治医からの指示に沿って対処します。改善しない場合や繰り返す場合は医療機関につなぎます。症状の原因を職場だけで低血糖と決めつけず、運転や危険作業の再開も、その場の自己判断で済ませないことが大切です。

ブドウ糖を置くことは、食事や休憩を後回しにしてよい理由にはなりません。

共有するのは、仕事に必要な配慮と緊急時の対応

Aさんが社長に相談したからといって、詳しい病状や検査値を全員へ知らせる必要はありません。本人と、誰に何を伝えるかを話し合います。

通常の業務連絡は、例えば「この時間は窓口を休止する」「急ぎの案件は社長が受付可否を判断する」といった内容で足りる場合があります。顧客への案内も、受付時間の変更として説明できます。

一方、緊急時に対応する人には、必要な手順を具体的に共有します。業務予定の記録と、詳しい健康情報は分けて管理し、健康情報を見られる人を必要な担当者に限ります。個人情報保護委員会・職場での健康情報の取扱い

一週間後に確認するのは「実際に食べられたか」

受付時間を変えたら、例えば一週間後に社長と本人が短く振り返ります。専用のシステムを入れなくても、次のような業務上の記録から始められます。

変更したこと:昼休み中の見積り相談は、窓口再開後に受け付ける。
確認すること:予定した時間に食べ始められたか。電話で中断しなかったか。同僚の休憩や残業にしわ寄せが出ていないか。
決める人:社長。次回の確認:○月○日。

確認日まで我慢してもらう運用にはしません。食事を取れない日が続く、体調に変化がある、必要な配慮を実施できないと分かったら、その時点で医師への相談と仕事の再調整を進めます。

続けるための条件が整わない場合は、該当業務の縮小や一時中断も含め、本人・医師と相談します。休業や賃金の取扱いが関わる場合は、社会保険労務士等にも確認します。

その後、繁忙期の受付方法や引取り予約を標準化し、一人の経験に頼っている見積り手順を少しずつ整理します。治療内容や仕事内容が変わったときには、必要な配慮も改めて確認します。

産業医を選任していない会社でも相談できます

産業医がいない場合は、まず本人の主治医へ仕事内容を伝え、必要な配慮を確認します。職場への当てはめに迷う場合には、産業保健に詳しい外部の医師へ相談する方法もあります。

佐賀・筑後産業保健事務所では、50人未満の事業場向けの相談・面談を受け付けています。個別案件への医学的助言・従業員面談は有料で、対応範囲と料金を確認してからご依頼いただけます。

お問い合わせでは、「窓口担当が一人」「昼食が遅れる日がある」など、人数と仕事上の困り事をお知らせください。最初の連絡に、従業員の実名や詳しい検査結果を記載する必要はありません。

※資料確認日:2026年10月12日。一般的な情報と架空の対応例をまとめた記事です。個別の治療や就業上の判断は、主治医・産業医等にご相談ください。

参考資料

コラムは産業保健の一般的な考え方を整理したものです。公開時点の情報に基づきますが、法令の解釈や運用は一次資料と専門家の確認が必要です。個別事案の判断には使えません。

関連記事

無料相談・見積り