佐賀・筑後産業保健事務所の本文へスキップ
佐賀・筑後産業保健事務所企業のための産業医サービス

健診で「要再検査」。受診しない従業員に会社はどう対応する?

再検査を勧めても受診につながらない。忙しい、すでに通院中、返信がないという3つの架空事例から、担当者の声かけ、医師への相談、記録と情報共有の方法を具体的に解説します。

執筆: 佐賀・筑後産業保健事務所公開日:

この記事は約9分で読めます(目安)。

「再検査の案内は渡しました。でも、まだ病院に行っていないようです」

健診後の対応では、ここから先に迷うことがあります。もう一度連絡するのか、上司から強く言ってもらうのか、それとも本人の判断に任せるのか。

会社が進めたいのは、受診できていない事情を確認して必要な受診につなげることと、今の仕事を続けるうえで配慮が必要か、医師の意見を聴くことです。

この記事では、一般の定期健康診断後の対応を、3つの事例で整理します。事例・会話・記録例は説明のために作成した架空のもので、当事務所の相談実績や特定の企業・従業員を示すものではありません。

最初に、「受診の確認」と「仕事上の判断」を進める

再検査を受けたか確認するだけでは、健診後の対応は完了しません。異常の所見があると診断された従業員について、会社は仕事上の措置に関する医師等の意見を聴き、必要な対応を行います。再検査・精密検査が必要な人には受診を勧め、その結果を意見聴取に役立てます。厚生労働省の指針

そのため、本人への連絡と並行して、健診結果と仕事内容を、産業医など意見を聴く医師に確認してもらう準備を進めます。

健診機関から早期の受診を指示されている場合は、その内容を先に確認します。担当者が「症状がないから来月でよい」と判断せず、受診時期が不明なときは健診機関や医師に確認してください。

事例1:「忙しくて行けない」配送担当者

配送担当のAさんは、血圧の項目で受診を勧められました。人事が声をかけると、こう答えました。

「特に具合は悪くありません。病院が開いている時間は配送中ですし、自分が抜けると積み込みも回りません」

この場合、受診の必要性を説明することに加え、仕事のどこを調整すれば受診できるのかを確認します。

担当者の声かけは、たとえば次のように具体化できます。

「受診に使える時間を確保できるか、一緒に確認しましょう。予約先や日程で困っていることはありますか。業務の引き継ぎが必要なら、こちらで調整します」

この架空の職場なら、積み込みの担当交代や、受診時間に合わせた配送の組み替えが検討事項になります。利用できる休暇・勤務調整の制度も確認し、医師から示された受診時期に間に合うよう進めます。

同時に、産業医等へ運転時間、早朝勤務、残業、荷物の積み下ろしの負荷を伝え、受診までの間に仕事上の配慮が必要か確認します。無症状という本人の説明だけで、通常勤務に問題がないとは判断できません。

連絡を終えるときは、「本人が予約を確認する日」「会社が勤務を調整する担当者」「次に状況を確認する日」を決めます。「時間ができたら受診してください」で予定が曖昧にならないようにします。

事例2:「もう通院しているのに、また再検査ですか」

事務職のBさんは、血糖の項目について案内を受け、こう話しました。

「その件では、すでに通院しています。毎年同じ手紙が来るので、どう返せばよいのか分かりませんでした」

会社の管理表では「報告なし」でも、本人は治療を続けている可能性があります。まず、今回指摘された項目について通院しているのか、今回の健診結果を主治医に見せたかを、確認する目的を説明して尋ねます。

「通院されているのですね。今回の健診結果は、主治医に確認してもらえましたか。仕事上の配慮が必要か確認するため、詳しい内容は産業医への相談で整理できます」

追加の検査が必要か、次の予約日を待ってよいかは、今回の結果を踏まえて医師に確認します。通院中というだけで対応済みにせず、会社の判断で一律に別の病院での検査を求めることも避けます。

会社や産業医が主治医と直接やり取りする場合は、確認の目的、項目、共有先を本人に説明し、同意を得て進めます。上司が治療内容を一つずつ聞き取る形にする必要はありません。

この事例では、管理表を「通院中・今回の結果の主治医確認は未確認」と更新し、次の確認日を決めると、何が済んでいて何が残っているかが分かります。

事例3:案内を2回送ったが、返信がない

製造現場のCさんへ、人事から受診案内を2回送りましたが、返信がありません。上司からは「受診しないなら現場に入れないと言えばよいのでは」と相談されました。

まず確認するのは、連絡が届いているか、本人が返答方法を理解しているかです。メールを見られない勤務環境や、健康情報を誰に伝えるのか分からないことが原因かもしれません。個別に話せる機会や、産業医等へ相談できる窓口を案内します。

記録も、「非協力的」「受診拒否」と決めつけず、確認できた事実を残します。

「10月7日、個別に案内を送付。10月10日時点で返信なし。10月11日に担当者から到達確認と個別相談の案内を行う予定」

この日付は記載方法の例であり、医学的な緊急性にかかわらず数日待ってよいという意味ではありません。

返信を待つ間も、会社は健診結果と担当業務を医師に示し、現時点で判断できること、追加確認が必要なこと、当面の配慮を相談します。情報が不足している場合に、無理に「通常勤務可」の結論だけを求めないことも大切です。

勤務制限は、医師の意見と本人の事情を踏まえ、必要な範囲を検討します。未返信への制裁として一律に出勤を止める対応は避けます。本人が明確に受診を拒んだ場合も、理由や受診の必要性について対話を続け、受診命令や懲戒の可否を検討する段階では、就業規則や個別事情を含めて弁護士等に確認します。

「3か月以内」を、再検査の猶予期間にしない

会社が実施する一般の定期健康診断で異常所見がある人については、会社が医師等の意見を聴く時期は、健診が行われた日から3か月以内です。健診機関から会社への結果票の到着が遅れても、その到着日から数え直すものではありません。岡山労働局の説明

ただし、本人が会社指定の医師による健診に代えて、相当する健診を別の医師から受け、結果を証明する書面を会社に提出する法定の扱いでは、提出日が起算日になります。聴取した医師等の意見は、健康診断個人票への記載も必要です。労働安全衛生規則第51条の2

これは会社の意見聴取の期限です。「本人は3か月以内に再検査すればよい」「再検査が終わるまで会社の対応を待ってよい」という意味ではありません。

実務では、再検査の結果が全員分そろうのを待たず、健診結果が届いた段階から医師への相談を手配します。相談の予約や依頼だけで意見聴取が完了したことにはなりません。追加の情報が必要な人は、期限も踏まえて確認方法と再評価の時期を医師と整理します。早期の対応が必要とされた人は、3か月を待たずに対応してください。

管理表は「受診済み」の一列で終わらせない

担当者が限られる職場でも、次の項目を分けると、対応の止まっている場所が分かります。

管理する項目 記録する内容の例
健診と意見聴取の日程 健診日、結果受領日、医師への依頼日、意見聴取の予定・実施日
受診の進み具合 未予約、予約済み、受診済み、通院継続中、本人への確認待ち
受診に向けた支援 本人から希望のあった時間調整、案内した相談窓口
次の連絡 誰が、いつ、何を確認するか
仕事上の対応 医師の意見を踏まえた配慮の内容、実施担当者、見直し日

これは当事務所が作成した運用上の項目例で、法定の健康診断個人票に代わるものではありません。

管理表は担当者を限定し、健診結果などの詳細な医療情報と、現場が実施する勤務上の配慮を分けて扱います。上司への共有は、勤務調整に必要な内容を中心にします。法令に基づく取得と、それ以外の健康情報の取得では同意の扱いも異なります。個人情報保護委員会の留意事項

健診後の対応が止まっているときは

佐賀・筑後産業保健事務所では、健康診断後の就業判定・事後措置について、健診結果と仕事内容を踏まえ、受診勧奨や仕事上の配慮を整理する支援を行っています。現在の健診機関や産業医との役割分担を確認し、担当できる範囲をご案内します。

お問い合わせでは、従業員数、主な仕事内容、健診の実施時期、どの対応に困っているかをお知らせください。初回のフォームには、従業員の氏名、病名、検査値、結果票の内容など、個別の健康情報は入力しないでください。

制度の基本は、「健康診断後の事後措置と就業判定とは」でも説明しています。

※本記事は一般の定期健康診断後の対応を想定した情報提供です。特殊健康診断では再検査等の実施義務が定められている場合があります。具体的な受診時期や就業上の措置は、本人の状態、仕事内容、適用される制度に応じて確認してください。厚生労働省等の公的資料を参考に、解説・事例・管理項目の表を当事務所が作成しています。

参考資料

コラムは産業保健の一般的な考え方を整理したものです。公開時点の情報に基づきますが、法令の解釈や運用は一次資料と専門家の確認が必要です。個別事案の判断には使えません。

関連記事

無料相談・見積り