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残業は少ないのに疲れ切っている従業員。人事は何を確認する?

残業時間は少ないのに、眠気やミスが増えている。遅番の翌日の早番、休憩中の電話対応、退勤後の業務連絡という3つの架空事例から、人事が確認する記録、声かけ、勤務調整と産業医への相談を解説します。

執筆: 佐賀・筑後産業保健事務所公開日:

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「残業は月10時間ほどです。それなのに、最近ずっと疲れていると言われました」

人事や経営者が、こうした相談に戸惑うことがあります。勤怠表では長時間労働に見えなくても、本人は朝からぐったりしていたり、仕事中に強い眠気を感じていたりします。

残業の月合計に加え、確認したいのは、勤務と勤務の間に休めているか、勤務中の負担がどう重なっているか、記録に入っていない仕事がないかです。

厚生労働省の疲労蓄積度チェックリストも、労働時間だけでなく、勤務の不規則さ、休憩、仕事の負担、睡眠や休息の状況を確認する構成になっています。疲労蓄積度自己診断チェックリスト

以下の事例・会話・対応表は説明のために作成した架空のもので、当事務所の相談実績や特定の企業・従業員を示すものではありません。

事例1:残業は月12時間。でも、遅番の翌日に早番がある

物流拠点の事務担当Aさんは、残業が月12時間ほどです。ところが、勤務表には22時に終業し、翌朝7時に始業する組み合わせがありました。

「残業自体は多くありません。ただ、遅番の翌日が早番だと、帰宅して食事や入浴を済ませたら、もう寝る時間です。朝は頭がぼんやりします」

22時から翌朝7時までは9時間ですが、そのすべてを睡眠に使えるわけではありません。通勤や身支度などの時間も含まれます。

担当者は、次のように尋ねると、調整する点を見つけやすくなります。

「特に眠気が強いのは、どの勤務の翌日ですか。遅番の後に早番が続く日と、それ以外の日で違いはありますか」

本人の説明と、実際の始業・終業記録、勤務変更の履歴を照らし合わせます。予定表では休める組み方でも、欠員対応で急な変更が繰り返されているかもしれません。

この職場で検討できるのは、遅番の翌日の始業を遅らせること、急な早番への変更を減らすこと、欠員を同じ人だけで補わないことです。通勤も踏まえ、生活時間と睡眠を確保できる勤務の組み方を考えます。

ここでの9時間は状況を説明する数字であり、安全を保証する基準や、一律の法的判断を示すものではありません。必要な配慮は本人の状態や業務を踏まえて検討します。

事例2:定時で帰れるが、昼休みも電話番をしている

経理と受付を兼務するBさんは、ほぼ定時に退勤しています。ただ、昼休みも電話が鳴れば対応し、請求書の確認中も来客があれば席を立ちます。

「仕事の量はそれほど多くないと言われます。でも、途中で何度も呼ばれるので、何を確認していたか分からなくなります。昼も落ち着いて食べられません」

この場合、「残業がないから余裕がある」とは判断できません。人事が確認したいのは、仕事の総量に加え、作業が中断する場面と、実際に仕事から離れられる時間です。

「請求書を確認している間、電話は誰が受けていますか。昼休みは、電話に出ずに席を離れられますか」

会社から休憩中の電話や来客対応を指示されている場合、その時間を休憩として扱うことはできません。電話が鳴った時間だけでなく、対応を求められて待機している実態も確認します。厚生労働省・休憩のルール

対応例としては、昼休みの電話担当を交代制にして、それぞれが業務から離れる休憩を取れるようにする、請求書の確認時間は別の人が受付を担当する、といった方法が考えられます。

「自分でうまく休んでください」と伝えるだけでは、電話を取る人がBさんしかいない状況は変わりません。担当者と引き継ぎ方法を決め、法令上必要な休憩を確保するとともに、勤怠の扱いも見直します。

事例3:残業申請は少ないが、退勤後も業務連絡に対応している

営業担当Cさんの残業申請は月10時間ほどです。しかし、話を聴くと、帰宅後も上司からの連絡に応じ、翌日の見積書を修正していました。

「パソコンを開くのは毎回20~30分くらいです。短いので残業申請はしていません。連絡が来そうで、夜もスマートフォンが気になります」

このケースでは、まず「残業が少ない」という前提を確認します。本人の申告だけでなく、会社が適切に取得・利用できるパソコンの利用記録や業務連絡なども手がかりにし、いつ、どのような指示で、何をしていたかを整理します。

「帰宅後に対応した仕事も確認します。短時間だから申請できないと思っていた作業はありますか。夜の連絡は、いつまでの返信を求められていますか」

労働時間に当たるかは、会社の指示や実際の拘束状況などから判断します。未申請や自宅での作業というだけで、労働時間から外れるわけではありません。記録と実態が異なる場合は、確認して必要な補正を行います。労働時間の適正把握ガイドライン

一方、メッセージが届いたことだけで、その後の時間すべてが労働時間になると一律には判断できません。実際の対応時間や、即時対応を求める待機の有無などを確認する必要があります。

会社側では、翌営業日でよい連絡はその旨を明記する、通常の依頼は勤務時間内に送る、緊急時の連絡先と当番を決める、といった運用を検討します。時間外の対応が必要なら、担当、記録方法、労働時間・賃金の扱い、休息の確保まで整理します。

本人に通知を切らせるだけで、上司や顧客から即時返信を求められる運用を残さないことが大切です。

疲労が強いときは、勤務の見直しと医師への相談を進める

勤務の状況を調べている間も、体調への対応は進めます。疲労や眠気の原因を、担当者が仕事だけ、あるいは本人の生活習慣だけに決めつけることは避けます。

休んでも疲れが取れない、眠気で仕事に支障がある、ミスが増えているといった場合は、産業医等への相談や医療機関の受診につなげます。厚生労働省のメンタルヘルス指針も、相談内容に応じた配慮や、必要に応じて医療につなぐ体制を求めています。労働者の心の健康の保持増進のための指針

強い眠気で安全に運転や機械操作を続けられない場合は、その作業を続けさせず、安全を確保して医師等に相談します。日常の疲労の訴えだけで、一律に休職や配置転換を決めるという意味ではありません。

疲労蓄積度チェックリストは、相談のきっかけや状況整理に役立ちますが、病気の診断や勤務可否を決めるものではありません。点数が低いことを理由に、本人の不調を取り合わない対応は避けてください。

相談後は「誰が何を変えるか」を記録する

以下は、会社側の対応を整理するための記載例です。医学的な判定表や法定様式ではありません。

確認した状況 会社が検討・実施すること 次に確認すること
遅番の翌朝に眠気が強い 勤務表の担当者が、次の早番を調整できるか確認 変更後の睡眠・眠気と、急な勤務変更の有無
昼休みも電話対応がある 管理者が交代要員と休憩の取り方を決め、勤怠を確認 実際に業務から離れられたか
退勤後に見積書を修正している 上司と人事が、指示・作業時間・記録の補正を確認 時間外の依頼や待機が残っていないか

各項目には担当者と確認日を付けます。緊急性のある状態を、次回の定例会議まで待たせないようにします。

上司へ共有する情報は、勤務調整に必要な内容を中心に整理します。詳しい症状や治療内容などは、目的と共有範囲を本人に説明し、適切に取り扱います。

産業医には、残業時間と一緒に「勤務の実態」を伝える

産業医へ相談する際は、月の残業時間に加えて、日ごとの始業・終業時刻、勤務の並び方、休憩の実態、時間外の対応、安全に関わる作業を整理すると、必要な配慮を検討しやすくなります。

佐賀・筑後産業保健事務所では、産業医面談・面接指導を通じて、健康状態と仕事内容を踏まえた医学的な評価・助言を行います。労働時間や賃金の法的な取扱いについて判断に迷う場合は、社労士や弁護士等とも役割を分けて確認します。

お問い合わせには、従業員の氏名や詳しい診断内容を記載せず、「残業は少ないが疲労の訴えがあり、勤務の組み方を相談したい」など、事業場の状況と相談事項の概要をお知らせください。

※本記事は、公的資料を参考に、当事務所が解説・架空事例・対応表を作成したものです。個別の事案についての診断や法的判断を示すものではありません。

参考資料

コラムは産業保健の一般的な考え方を整理したものです。公開時点の情報に基づきますが、法令の解釈や運用は一次資料と専門家の確認が必要です。個別事案の判断には使えません。

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