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佐賀・筑後産業保健事務所企業のための産業医サービス

耳栓を配っているのに、聞き返しが増えた。小さな工場で産業医に相談できること

耳栓は用意しているのに、作業中の聞き返しが増えた。12人の金属加工会社の架空事例から、受診の判断、産業医の職場巡視、騒音測定、保護具と伝達方法の見直し、人員や設備投資に制約がある職場での進め方を解説します。

執筆: 佐賀・筑後産業保健事務所公開日:

この記事は約10分で読めます(目安)。

「耳栓は全員に渡しています。それでも最近、作業中に何度も聞き返す従業員がいます」

小さな工場では、こうした変化に気づいても、「本人の年齢のせいか」「もっとしっかり耳栓を使ってもらえばよいか」と迷うことがあります。

産業医に相談できるのは、聞こえの状態と実際の作業を照らし合わせ、必要な受診、仕事上の配慮、職場の改善を整理することです。 作業環境や作業方法への助言も、産業医の職務に含まれます。厚生労働省・産業医の職務

以下では、産業医を選任していない会社が、産業保健に詳しい外部の医師へ相談する場面も扱います。事例・会話・対応例はすべて架空で、当事務所の実績や実在の企業・従業員を示すものではありません。

12人の工場。耳栓を外さないと、作業の指示が伝わらない

従業員12人の金属加工会社を想定します。社長は営業と現場管理を兼務し、事務担当は一人。研削盤を使う仕上げ工程には3人が入り、その隣に検品台があります。

仕上げ担当のAさんは、最近、指示を聞き返すことが増えました。本人からは「作業が終わったあと、耳鳴りがすることがある」とも聞きました。

会社は耳栓を支給しています。ただ、急な仕様変更は稼働中の機械のそばで口頭で伝えられ、Aさんはそのたびに片側の耳栓を外しています。仕上げを離れて検品に回っても、隣の研削盤の音は続いています。

Aさんにしか任せられない加工もあり、すぐに別の担当へ替えることはできません。工場も狭く、設備を一式更新する予算はありません。

この場面では、耳栓の着用を注意するだけでなく、外す必要が生じている仕事の進め方と、検品中も音から離れられない配置を確認する必要があります。

聞こえの変化を、年齢や騒音だけで決めつけない

社長が最初にかける言葉は、例えば次のようなものです。

「聞き取りにくいのは、いつ、どんな場面ですか。耳鳴りもあると聞いたので、耳鼻咽喉科で確認してもらいましょう。仕事で困っている場面も教えてください」

聞き返しが増えたことだけで、騒音性難聴とは診断できません。周囲の音で会話が届いていない場合もあれば、耳の病気などが関係している場合もあります。

特に、急に聞こえにくくなった、片耳だけ聞こえが悪い、耳鳴りやめまいを伴うといった変化は、早めの耳鼻咽喉科受診につなげます。産業医への相談日や次の健診まで待たせないことが大切です。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会・耳の症状

同時に、会社は当面の作業の安全を確認します。停止の指示や警報が伝わらず危険があるなら、その状態で作業を続けさせず、安全な連絡方法と作業条件を整えます。聞こえにくさを申告した人を、一律にすべての仕事から外すという意味ではありません。

産業医には、健診結果と一緒に「一日の動き」を見てもらう

職場巡視では、機械が並んでいる様子だけでなく、誰がどこで何をしているかを確認します。実際の作業を見ることで、職場の環境と健康上の課題を結び付けやすくなります。労働者健康安全機構・職場巡視のポイント

この工場なら、社長と現場担当者が、次の情報を用意すると相談が具体的になります。

  • 研削、検品、梱包などを行う場所と、おおよその作業時間。
  • 複数の機械が同時に動く時間帯と、その近くで働く人。
  • 耳栓を外す場面、痛みや装着のしにくさの訴え。
  • 過去の騒音測定の記録、本人の聴力検査の結果と変化。

本人の健康情報は、相談に必要な範囲を確認し、適切な方法で医師へ渡します。現場全員が見られる工程表に、詳しい検査結果を書き込む必要はありません。

産業医はこれらを踏まえ、専門医による評価や、追加の情報が必要か、どの作業に配慮が必要かを検討します。診断・治療は耳鼻咽喉科と連携し、騒音の測定・評価や設備対策は、測定機関などの専門家と役割を分けて進めます。

短時間の巡視で「それほど大きな音には感じなかった」としても、通常の稼働状況の確認や必要な測定の代わりにはなりません。測定記録がなければ、会社から測定機関等に、作業内容に合う測定方法・範囲・費用を相談します。

耳栓は「配ったか」に加えて、使い続けられるかを確認する

耳栓やイヤーマフは、作業環境に合う製品を選び、適切に装着する必要があります。また、周囲の合図や会話が必要な仕事では、保護と情報伝達を両立させる検討が必要です。厚生労働省・騒音障害防止ガイドライン「作業管理」

Aさんが耳栓を外す理由が「仕様変更を聞くため」なら、指導だけでは同じことが繰り返されます。

例えば、通常の変更指示は所定の場所で図面を見ながら伝え、機械のそばで叫んで済ませる運用を見直します。機械を止めて確認する場合は、その設備の安全な停止手順に従います。

緊急停止の連絡まで、通常の打合せと同じ扱いにはできません。視覚的な合図や表示なども含め、安全担当者や設備業者と、作業中に確実に気づける方法を検討します。合図を決めただけで終えず、実際の保護具・立ち位置で伝わるかを確認します。

「聞こえるように片耳を外しておく」を通常の対策にせず、外さなくても仕事が進む条件を整えます。

設備更新や交代要員が難しいとき、何から変えるか

騒音対策には、音の発生を減らす、音が届く経路を見直す、作業方法を変える、といった選択肢があります。厚生労働省も、設備の保守や配置、作業スケジュールなどを対策として挙げています。厚生労働省・騒音対策の方法

以下は、この架空の工場で検討する例です。効果や費用を保証するものではなく、必要な対策は測定結果と現場の条件に応じて決めます。

表は横にスクロールできます。

現場の制約 会社が検討する対応と、実行前の確認
検品に移っても、研削盤の隣にいる 社長と現場担当者が検品台の移動候補を考える。搬送距離、避難経路、別の危険が増えないかを確認し、移動先の騒音も評価する
機械を買い替える予算がない 社長が設備業者へ、異音の原因や保守・部品交換で改善できる部分を相談する。必要な停止時間と見積りを確認して予定を組む
Aさんの騒音作業を減らすと、納期に間に合わない 社長が受注量と納期を調整する。外注は品質・費用・契約条件が合う場合の選択肢とし、同僚や社長の長時間作業へ丸ごと移さない

最初の状況整理は、社長か現場担当者が紙一枚に、機械と作業場所、一日の仕事の流れを書くことから始められます。図面をきれいに作り直す必要はありません。

一方、必要な測定、保護具の見直し、設備の改善には費用や作業停止の時間がかかる場合があります。「お金をかけずにできること」だけで十分とは限りません。安全に続けられる条件を確保できなければ、該当する作業の縮小・停止も含めて、会社が判断する必要があります。

中長期では、設備更新時に騒音の情報も比較する、工程を変更する際に測定や作業者への影響を確認するなど、変更のたびに見直す仕組みを整えます。

対策後は、使えているか、音への曝露が減ったかを確かめる

「新しい耳栓を買った」「検品台を動かした」で完了にはしません。次のような短い記録を残すと、兼務の担当者でも追いかけやすくなります。

変更したこと:仕様変更の説明を、機械のそばで行わない。
担当:社長。
実施後の確認:耳栓を外して聞き直す場面が残っていないかを、現場担当者と確認する。確認日も決めておく。

これは独自の実務例です。騒音を受ける状況の改善は必要な測定等で確かめ、聴力は医師の評価と適切な健診で確認します。本人が「慣れた」「気にならない」と話すことだけを、改善の根拠にはしません。騒音による聴力低下は、本人が初期の変化に気づきにくいことがあります。厚生労働省・騒音性難聴

また、年1回の一般健診で聴力検査を受けていても、それだけで騒音作業に必要な健康管理が整っているとは限りません。対象業務、騒音の状況、健診の時期・項目を、産業医や健診機関へ確認します。厚生労働省・騒音障害防止ガイドライン「健康管理」

産業医がいない会社も、作業場所と困りごとから相談できる

産業医の選任義務は、原則として常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに判断します。ただし、50人未満でも、作業内容に応じて必要となる健康・安全の対策があります。騒音の測定や健診については、法令上の義務とガイドラインに基づく対策を区別し、自社の作業への適用を確認します。厚生労働省・産業医の選任基準、騒音障害防止ガイドライン

相談の入口は、「耳栓を支給しているが、指示を聞くために外している」「検品も同じ作業場で行っている」という具体的な状況で構いません。

佐賀・筑後産業保健事務所では、50人未満の事業場の健康相談や、嘱託産業医契約での職場巡視・健診後対応を通じ、健康状態と仕事内容を踏まえた医学的な助言を行います。訪問の必要性や対応範囲を確認してご案内します。個別の医学的相談は有料です。騒音測定や耳鼻咽喉科での検査が必要な場合は、実施機関・費用を別に確認します。

お問い合わせには、従業員の実名や詳しい検査結果を書かず、作業の種類、人数、現在困っていることをお知らせください。

※本記事は、2026年10月11日時点で確認した公的資料・学会資料を参考に作成した一般的な解説です。個別の診断、就業上の措置、法令の適用は、本人と作業場の状況に応じた確認が必要です。

参考資料

コラムは産業保健の一般的な考え方を整理したものです。公開時点の情報に基づきますが、法令の解釈や運用は一次資料と専門家の確認が必要です。個別事案の判断には使えません。

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