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復職した社員の仕事を同僚が抱えている。配慮と分担をどう見直す?

メンタル不調から復職した社員への配慮を続ける一方、支える同僚の残業や不眠が増えている。90人の事業場・4人の購買課の架空事例から、仕事の引受け方、健康情報の共有、総務・上司・嘱託産業医による見直しを解説します。

執筆: 佐賀・筑後産業保健事務所公開日:

この記事は約10分で読めます(目安)。

「復職した同僚を支えたい気持ちはあります。でも、引き受けた仕事が減らず、私も眠れなくなってきました」

メンタルヘルス不調から復職した社員への配慮を続けるうちに、周囲の同僚からこんな相談が出ることがあります。

本人に必要な配慮と、支える同僚の健康を、両方守るための見直しが必要です。 「もう少し協力して」と頼むだけでなく、引き継がれた仕事の量・難しさ・期限と、会社が減らせる仕事を確認します。

厚生労働省の職場復帰支援の手引きでも、復帰した本人の状態だけでなく、支援プランの実施状況や、受け入れる管理監督者・同僚の負担に配慮することが示されています。職場復帰支援の手引き

この記事は、常時50人以上の事業場で嘱託産業医と連携する、経営者・人事総務・現場責任者を主な対象としています。以下の事例・会話・表・記録例はすべて架空で、当事務所の実績や実在の相談例ではありません。時間や手順は、現場で検討するための提案例です。

90人の事業場。4人の購買課で、確認と交渉が一人に集中した

常時90人が働く製造業の事業場を想定します。購買課は課長を含め4人。総務は2人で、一人が衛生管理者を兼務しています。嘱託産業医は選任済みですが、常駐の保健師はいません。

メンタル不調で休職していたAさんが復職し、3週間が経ちました。本人と主治医・産業医の意見を踏まえた会社の計画では、当面は15時までの勤務とし、定型的な発注入力から始め、急な納期交渉は担当しないことにしています。

ところが、Aさんが外れた納期交渉と、入力後の確認をBさんが引き受けた一方で、Bさん自身の発注業務や月次集計は減っていません。課長は「しばらく助け合って」と伝えただけでした。

Bさんは以前より残業が増え、昼休みも取引先からの折り返しを待つようになりました。総務への相談では、「Aさんを責めたいわけではありません。いつまでこの量を続けるのか分からず、夜も翌日の仕事を考えています」と話します。

Aさんも周囲の様子を気にして、「もう残業できます」と言い始めました。

ここで必要なのは、どちらが我慢するかを決めることではありません。会社が設定した配慮を実施すると、誰にどの仕事が残るのかを、改めて確認することです。

同僚の訴えを「不満」で片づけず、仕事と体調を聴く

総務と課長は、まずBさんから個別に話を聴きます。Aさんと同席させて、仕事を戻す交渉を始める場にはしません。

「支援の仕事が増えた分、今の業務が収まっていないのですね。追加になった仕事と、休憩・残業への影響を確認させてください。眠れていないことも、別に相談できるようにします」

確認したいのは、残業時間だけではありません。納期を守れるか判断できない、取引先からの連絡を一日中待つ、ミスを防ぐ責任を一人で抱える、といった負担もあります。

仕事の量・質、労働時間、責任などを踏まえて職場環境を見直し、不調のある人には必要な相談や受診を勧めることは、メンタルヘルス対策の一部です。厚生労働省・心の健康の保持増進のための指針

Bさんに不眠や日中の支障が続いているなら、本人の健康相談として産業医等につなぎ、必要な受診を促します。課の仕事を見直す会議や、次回の産業医訪問まで待たせる前提にはしません。

Aさんにも別に話を聴き、今の仕事で困ること、勤務後の疲れ、周囲を気にして無理をしていないかを確認します。「残業できます」という発言だけで勤務を延ばさず、現在の状態を踏まえて産業医等へ相談します。

引き受ける仕事と、減らす仕事を一組で決める

この購買課では、課長と総務が20分程度の打合せから始め、既存の発注表と予定表で、Bさんに追加された仕事を整理することにします。準備や取引先との調整の時間は別に確保し、総務の通常業務も責任者が調整します。

一日の担当件数を単純に均等にするだけでは、負担がそろうとは限りません。定型入力と、判断が難しい納期交渉では、必要な時間や責任が違うためです。

表は横にスクロールできます。

今、負担になっている仕事 見直しの案 誰が決め、何を確認するか
Bさんが納期交渉と元の月次集計を両方抱えている 社内向け集計の利用目的を確認し、重複部分の作成を一時的に止める。 集計を求める責任者が承認する。法令・契約上必要な記録は残す。
急な納期変更の可否をBさんだけが判断している 生産計画に影響する変更は課長が判断し、Bさんには確認先と回答期限を示す。 課長に必要な権限がなければ、工場長が判断先を決める。
Aさんの仕事の確認役が、いつもBさんになっている 必要な確認工程と所要時間を決め、その時間も担当者の業務量に含める。 課長が既存業務を減らして時間を確保する。必要な承認・品質確認は省略しない。
昼休み中の折り返し電話を待ち続けている 取引先との連絡時間を調整し、休憩中の連絡は課長等が引き取る運用にする。 課長が担当と休憩時間を組み直す。交代できなければ、緊急連絡の扱いを整理し、契約条件を確認して折り返し時間を案内する。

課長が判断や電話を引き取る場合も、課長の会議・報告作業をどこまで減らすか、工場長と確認します。上司が夜にすべて処理する形に置き換えるだけでは、問題が残ります。

それでも人手が足りなければ、依頼の締切や非緊急の発注日程、受けられる業務量を見直します。採用・外注・他部署の応援は、費用、教育、権限、受入れに必要な時間を含めて検討する選択肢です。

安全、必要な休憩、法令・契約上の期限を守る条件で業務が収まらない場合は、経営者が人員・予算・業務範囲を判断します。「今いる4人で工夫して」で現場に戻し続けないことが大切です。

同僚に説明するのは、病名より仕事の運用

「詳しい病状が分からないと協力できない」と言われても、診断書や面談内容をそのまま配る方法は取りません。

健康情報の利用目的と共有範囲を整理し、現場には配慮の実施に必要な情報を伝えます。詳しい医学的情報は産業保健スタッフ等が扱い、必要な形に整理して共有することが基本です。個人情報保護委員会・健康情報の取扱い

Aさんに共有する目的・相手・内容を説明し、必要な同意等を確認したうえで、例えば課長から次のように伝えます。

「当面の担当と勤務時間は、会社としてこのように決めています。急な納期変更は私に上げてください。確認作業を担当する時間は、ほかの仕事を減らして確保します。分担は来週金曜に確認しますが、その前でも仕事が収まらなければ相談してください」

伝えるのは、仕事の範囲、判断する人、相談先、次に確認する日です。「来週には元どおり働ける」と、回復の期限を約束するものではありません。

治療と就業の両立支援指針でも、周囲への共有を必要な情報に限り、理解を得るとともに過度の負担を避け、組織として支える考え方が示されています。厚生労働省・治療と就業の両立支援指針

普段は自然に接しながら、決めた配慮を実施します。本人の様子を同僚全員で採点したり、仕事の途中で病状を繰り返し尋ねたりする運用にはしません。こころの耳・職場復帰に際しての支援

産業医には、復職者の経過と受入れ体制を伝える

総務・衛生管理者は、現在の復職支援プランに、実際の業務分担、勤務時間、休憩の状況、会社が検討している変更案を添えて産業医へ相談します。

「15時までの勤務と納期交渉を外す配慮は実施しています。ただ、確認作業と交渉が特定の同僚に集中しています。本人の健康状態から必要な配慮を確認するとともに、担当業務の組み方と、計画を見直す時期を相談したいです」

産業医は、健康状態と仕事を踏まえた配慮や再評価について医学的な意見を述べます。業務量、担当、予算を決めて実行するのは会社です。産業医に「同僚が納得するよう説得してください」と任せる相談にはしません。

Bさん自身の不眠については、個別の健康相談として扱います。Aさんの復職支援の説明や部署全体の打合せで、Bさんの症状まで共有する必要はありません。

主治医から追加情報が必要な場合は、本人への説明・同意を得て、仕事内容と確認したい点を絞って連携します。訪問日前の相談、追加面談、オンライン対応、意見書等の費用は契約や実施条件によるため、総務が窓口と確認します。

見直し日は、配慮を終える日とは限らない

仕事の分担は、変更後の翌週など、早めに実施状況を確認します。一方、勤務時間や担当業務の配慮を医学的に見直す時期は、本人の経過と医師の意見を踏まえて決めます。二つの日を同じにする必要はありません。

この購買課で確認するのは、例えば次の点です。

  • Aさんが決めた勤務時間と業務範囲で働けているか。無理な引受けが起きていないか。
  • Bさんの残業と休憩の状況、確認作業の時間が改善したか。
  • 課長やほかの同僚に、負担が移ったままになっていないか。
  • 未処理の発注や回答待ちが増え、納期・品質に影響していないか。

記録例:社内向けの重複集計は停止できたが、納期変更の判断待ちが残った。工場長が判断を引き取る条件と連絡先を決め、翌週に確認する。Aさんの勤務上の配慮は、産業医と確認した内容を継続。個々の体調は、それぞれの相談経路で確認する。

見直しても負担が解消しない場合は、その事実を産業医と経営者に伝え、本人の状態と受入れ体制の両面から再検討します。同僚の負担が大きいことだけを理由に必要な配慮を急に外したり、逆に支援する側へ無期限の肩代わりを求めたりしません。

厚生労働省の手引きでも、復帰後の状況を確認し、問題があれば関係者で支援プランを見直す流れが示されています。職場復帰後のフォローアップ

衛生委員会では、個人の病名や相談内容ではなく、「担当変更時に元の仕事を減らせているか」「支える側の相談先があるか」などを検討します。個別対応で分かった課題を、次の復職支援にも使える仕組みにしていきます。

佐賀・筑後産業保健事務所では、嘱託産業医契約を通じて、復職後の健康状態と実際の仕事内容を踏まえ、必要な配慮と見直しを支援します。依頼内容と現在の体制を伺い、対応できる範囲・費用をご案内します。

お問い合わせでは、事業場の人数、復職後の支援体制、「特定の同僚に仕事が集中している」などの相談概要をお知らせください。初回の連絡に、従業員の実名や診断書を添える必要はありません。

※資料確認日:2026年10月13日。一般的な情報と架空の対応例をまとめた記事です。個別の健康状態や就業上の措置は、医師等と確認してください。

参考資料

コラムは産業保健の一般的な考え方を整理したものです。公開時点の情報に基づきますが、法令の解釈や運用は一次資料と専門家の確認が必要です。個別事案の判断には使えません。

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